「○○はオウンドメディアとして成り立つのか?」という視点で、今回取り上げていくのは「住宅建材」です。
結論から言うと、住宅建材というコンテンツでもオウンドメディアは成り立ちます。
ただ一言に、住宅建材といっても、外壁材・窓や庇などの開口周り・屋根材・内壁材・建具・階段など、様々なジャンルとその種類がありますし、失敗しやすい落とし穴もあります。
住宅建材に関するオウンドメディアは、カタログ系?ライフスタイル系?
建材の種類に数多くあれど、切り口は2つになるのではないでしょうか。
- 建材の機能・性能を深く伝える、カタログ系
- その建材を使うことで得られる空間や時間を伝える、ライフスタイル系
大きく分けるなら、1のカタログ系は業者向けでしょう。一般の方だと、建材の機能・性能という小難しい内容は、よほど建材通な方でない限り興味を持たないでしょう。
2のライフスタイル系は、ここ数年で増えてきた一般の方をターゲットにした切り口です。建材単品を伝えるのではなく、出来上がる空間やそこで過ごす時間を伝え、興味をひく方法です。
商品の機能・性能を深く伝える、カタログ系の例
1のカタログ系で例を挙げるなら、以前も紹介したこちらのサイトです。
建材ダイジェストでは、建材そのものに焦点を当て、その建材の中身を掘り下げ、記事にしています。説明だけで終わるカタログでは知ることができない「体験感」を感じさせる内容になっています。
商品の機能・性能を深く伝える、カタログ系の場合、単に機能・性能を伝えるだけなら、カタログだけで十分です。オウンドメディアとして必要になってくるのは、カタログでは伝えられないリアルな感じを伝えるのが、大事な切り口でもあります。
例えば、下記の記事のような、「比較してみた」というのも、大事な体験感です。
こういったカタログでは伝えられないリアルな感じを出すには、机上だけの内容ではない行動が伴うことが求められます。実際の上記で紹介しているサイトではあれこれ試しています。多くの会社は、この手間を省きたがるため、なかなか響かない情報に留まっていたりします。
この種類のコンテンツがつくれると、少し意識し始めた一般の方にも届くようになります。また、工務店などの施工業者もお客さんに説明する際、役立つようになります。
その建材を使うことで得られる空間や時間を伝える、ライフスタイル系の例
こちらのサイトは、建築雑誌などでも有名なマガジンハウスが『ヘーベルハウス』を展開する旭化成ホームズ株式会社の特別協力を得て展開するウェブマガジンです。
メインとなるコンテンツは「空間事例」ですが、遊び心とクリエイティビティあふれ、住み手の生活シーンがたくさん写っています。大きな特徴は、ライフスタイルを中心に空間全体を伝えるため、ビジュアルが映え、一般の方にはウケが良いです。
ただし、建材を主としているわけではないため、どこにどんな建材使われているかは不明ですし、建材そのものは影に隠れてしまいます。
ライフスタイル系の切り口は、完成形を提供する工務店に徐々に増えています。建材会社においては建材商品が隠れてしまうためか、メディアとしては見かけません。
サイトの中身をどう考えるか?
中身の理想を挙げるなら、上記の1と2を組み合わせた内容でしょう。「事例の空間に、どんな建材が使われているかがわかり、その建材の詳細情報までわかる。」メディアサイトとしてつくりあげていくにはかなり大変かもしれませんが、すごく役立つ内容になります。
サイトの型はそこを目指せるといいですが、まず最初に大事なのは「コンセプト」です。
2のライフスタイル系の場合は、すでにコンセプトが確立されているケースが多いので、さほど苦労はしません。そのコンセプトに沿って、内容を作り込んでいけばいいのです。
ですが、1のカタログ系の場合、かなり難しいです。
上記で紹介した「建材ダイジェスト」の様に、他社の商品も紹介し、内容を充実させるなら、情報ポータルサイトとしての役割を担うため成り立ちます。
ですが、自社商品だけとなると、よほどの種類がないと、サイトとして成り立たないでしょう。しかも、自社商品だけの紹介になるわけですから、お客さんの為になるかというと疑問が残ります。これでは単なる宣伝カタログサイトになってしまいます。
極論になりますが、建材は余ってる時代です。他にも代替品は存在します。なので、業者あれ一般の方であれ、別にその建材が欲しいわけではありません。良い結果を得たい、失敗したくないなど、願望を叶えたいだけなのです。そう考えると、1のカタログ系の切り口はかなりハードルが高いのです。
単ジャンルか?複数ジャンルか?
もう1点、建材のオウンドメディアの中身を考える上で大事なことがあります。
取り扱うジャンルを
- ある一つジャンルの住宅建材単品を取り上げたものにするのか?
- 複数のジャンルの住宅建材単品を取り上げたものにするのか?
ということ。上記のような質問は、商品主義に多く見られがちで、商品ありきで考えようとする方に多いです。
これは、この「商品ありき」という視点自体がズレており、失敗しやすい傾向になります。もちろん、扱う建材を売りたいという気持ちはわかりますが、
「商品を主役にするのではなく、コンセプトを主役にする。」
サイトの数も、
「建材別で数を増やすのではなく、コンセプト別で数を増やす。」
という考え方が必要です。コンセプトを軸にして考えた方が、中身の広がりや深みも増しやすくなります。