「顧客事例」活用目的別の制作手法と配信方法、効果を出すヒント。顧客事例コンテンツ⑤【ネクストライク204号】

前号の「顧客事例」コンテンツの企画や作成の方法のご紹介に続き、顧客事例コンテンツ⑤として、「顧客事例」活用の目的別の制作手法と配信方法、効果を出すためのヒントについて考えてみました。

1.「顧客事例」の種類

商品・サービスの購買に好影響をもたらすことから、企業の多くが「顧客事例」コンテンツの作成に取り組みたいと考えているのではないでしょうか。

しかし、事例といえばインタビュー記事であるというイメージから、以下の点がハードルになってしまうようです。
・顧客にとってメリットがないのに、わざわざインタビューさせてもらえるか不安
・インタビューでこちらの意図どおりに話をしてもらえるのか心配になる
・社内にインタビューできる人材、記事を書ける人材がいない

また、「顧客事例」は、具体的な数字的な具体的効果を盛り込むので、商品・サービスの導入効果に説得力をもたせることができますが、一方で、顧客に具体的な数字の開示を断られる場合がある、成果が出るまではコンテンツが作成できないといった問題もあります。

しかし、「顧客事例」コンテンツは、必ずしも導入効果を語るものばかりではありません。
上記のような場合、公開の企画や内容を修正して、記事を掲載する方法があります。

例えば、
・社名の公開がNG →「〇〇業界 A社の声」など、匿名で実績を伝える
・成果が出ていない →採用や導入理由の部分を深掘った事例として取材を依頼する
・取材そのものがNG →企業ロゴだけでも頂き、導入実績のある会社としてサイトに掲載する

 BtoBマーケティングや営業活動において、「顧客事例」はとても効果的なコンテンツであり、さまざまな取材・記事タイプがあります。
次に、代表的な「顧客事例」の活用目的で分類した3種類(切り口)の制作パターンをご紹介します。

1)「顧客事例」活用の目的で分類したパターン

 ①【課題解決】パターン
採用したことで、解決したい問題、悩みや課題を解消した事例を紹介します。
起承転結の流れを踏まえながら、サービスを導入したことで生じた変化を具体的な指標を用いることで、説得性を高めます。

②【同業他社と比較】パターン
同業他社の商品と比較して成果が表れた事例を紹介するパターンです。「なぜこの商品・サービスが良いのか」「後悔しない選び方なのか」という現実的な疑問や不安の解消となり、決定権者への稟議書で必須の材料になります。
たとえば、事業責任者の問題意識や課題、期待するゴール、比較対象や評価の基準、社内合意のプロセスと様々な意見、導入の成果、今後の展開などを訴求します。

③【理想的な活用事例】パターン
自社の想定するターゲットであり、業種・規模、課題などで理想的なユーザー顧客の紹介は、有効な事例です。
既存顧客の中から、ターゲットと同様な企業、モデルケースとなる企業の活用事例を掲載することで自分たちに合った商品・サービスであることを最大限に伝えられます。

④【ユーザーのリアルな活用方法紹介】パターン
検討中のユーザーにとっては、既に導入した企業の活用・取り組み状況を紹介すれば、サービス導入時の状況を比較的簡単に想像することができます。
例えば、導入したキッカケや社内検討の経緯、選定の基準、決定となった決め手、導入後の活用の声や実態、採用後に社内活動で工夫した内容などを対談形式で構成します。

⑤【先進の他業界に学ぶ】パターン
業種や業界によっては、当該商品の導入実績が少ない分野があります。そういった導入が遅い市場を攻略するには、少ない事例の中からでも、できるだけ、似かよった業種・業界、課題などの事例を探してみます。
業種や業界が異なっても、抱えている問題点や課題は同じことが多く、その場合は、たとえ、他業界の先進企業の事例であっても、興味関心を得られます。もし、有名企業や独自のビジネスモデル企業の場合は、一層、そのことが言えます。

⑥【活用イメージ】パターン
新商品の導入期の場合は、そもそも導入事例がありません。しかし、もし、欲しい事例が公開されていない場合でも、「活用イメージ」なら活用できます。
企業側で想定する「活用イメージ」、例えば、「こんな課題があった時には、こんな用途があります。こんな問題・課題を解決します」といった、課題ごとや困ったシーン、新用途の提案を行います。
「活用イメージ」提案を行うことによって、新市場に対する、いわゆる、新用途開発の機会にもなります。

2)顧客事例の「成果の程度」で分類したパターン

 【成功事例】成果を具体的な数値で表現できる場合
導入後の具体的な取り組み数値成果について企業自らが語り、最後に、顧客のコメントを紹介することでお墨付きをもらい、信頼性を担保する最強事例といえます。

【活用事例】成果を数値として表現できない場合
成果を数値で表現できるほどではない、成功はまだしていないが、顧客の事例にはなる、具体的な活用や利用状況、いわば、いち早く採用した先行「顧客事例」です。
“活用事例“のため、定量的な成果は記載しないものの、顧客の言葉で語ることができるので信頼性の獲得には大きく貢献します。

【導入事例】導入時の動機や課題、経緯を紹介する場合
導入事例は、商品・サービスの導入について、導入した背景・動機や課題、なぜそのサービスに決めたのか、社内検討の経緯などを紹介するものです。
導入経緯にフォーカスするため、商品・サービスの活用が進んでいなくてもコンテンツにできるというメリットがあります。プレスリリースでもよく使われます。
成功事例や活用事例に比べると、導入時点という早いタイミングで作成でき、業界別や企業別、課題別などでまとめられるというメリットがあります。

【顧客名を入れない利用状況】
顧客の名称を出さず、業者や業界、企業規模・地域、課題などだけを明記して商品・サービスの利用状況を説明するパターン。
顧客と調整することなく、サービスの内容を説明でき、作成の負担を小さくできます。
ただし社名を出さないとはいえ、顧客には事例コンテンツを作成する旨を伝えておきます。

【匿名での事例紹介】
匿名で顧客の声を紹介する形式です。サービスの理解を促すのは難しいですが、生の声としてリアルな雰囲気を伝えられます。匿名で公開する場合でも、参考情報として業種業態、企業規模、地域といった情報を記載するようにします。

【企業ロゴのみの紹介】
商品・サービスの導入者のロゴだけをWebサイトに掲載する形式です。読み手側は深い理解と共感を得られませんが、提供側にとっては、コンテンツ作成に関して負担がかからないことがメリットです。

3)「人物」に焦点を当てた商品まわり事例パターン

商品まわりコンテンツなら、「人物」に焦点を当てて取材することで、心を打つ、他にはない唯一無二の事例にすることができます。たとえば・・・

①「自社商品の選ばれる理由」記事
商品の機能紹介をしているだけのメーカーの一方的な商品カタログ型ではなく(販売店に)選ばれた理由を詳しく記事にする
②「企業や事業部、マーケティング部門としての商品情報発信」記事
なぜその商品は生まれたのか。商品を発売する(した)理由や、なぜその商品を提供しているのかという市場や業界に対する意義などを記事化する。その製品が持っている「WHY(なぜ)」の説明。

③「企画開発部門の担当者としての商品情報」発信記事
世の中に、同じ人はいません。なので、商品の提案や開発している、人も重要なコンテンツ要素になります。人に焦点を当てて商品提案の様子(提案や工夫など)や企画調査そして開発の苦労話しを語ってもらいます。

④「販売事例」記事
販売店が商品を実際に販売した経緯や販売した結果などの事例を、インタビューし、社名と説明で紹介。

⑤商品の「活用シーン事例」記事
商品がどのような用途で使えるのかの具体的な活用シーン事例。

⑥うまく活用している会社へのインタビュー記事
上手くいっている販売店に、取材インタビューを行い、その様子を記事にしたり、動画にしたりなど。長編の場合はメルマガで分割紹介、ブログ記事にもする。

⑦よくある質問
一般ユーザや販売店からよく聞かれる質問をリストアップし、その回答をサイトに載せる。

2.顧客事例の配信手法

「顧客事例」は、企業のホームページや商品ページ、顧客事例ページのほか、プレスリリース、ニュースペーパー、商品/ブログ記事、ホワイトペーパー、顧客事例動画、ウェビナー素材、メールマガジン・MA、などのデジタル施策、定期情報誌、顧客事例冊子、提案パンフレットなどの関連するSPツール、研修会・相談会・勉強会などのSP施策にも配信して展開します。

「顧客事例」の配信展開手法を整理してみました。
1)企業ホームページや商品紹介、事例紹介ページ
2)プレスリリースとして配信する
3)Webのブログ記事・PDF(チラシ/新聞タイプ)
4)Web広告やLP(ランディングページ)に差し込む
5)記事メディア(Webや業界誌など)に掲載する
6)事例で協調したい部分を切り取ってSNSでシェアする
7)ウェビナーやホワイトペーパー、動画コンテンツへ展開する
8)メルマガ・MAのコンテンツとして紹介する
9)展示会やセミナー、相談会、研修、勉強会
10)ターゲット向けのキャンペーン(BtoB、BtoBtoC)
11)ターゲット向け各種コンテスト(販売や提案、事例収集など)
12)営業提案ツール(QRコード添付も)として活用する
13)パブリシティ資料として、関連するメディア(有料・無料)に掲載依頼する
14)インサイドセールスツールとして活用する
15)採用や研修など、社内の説明資料として活用する

3.「顧客事例」の効果を出すヒント

効果測定の中で、まず、リード獲得が重要です。その時、Webで「顧客事例」のDL施策を行っている企業は多いかと思いますが、DLフォームの項目数に注意が必要です。

情報収集フェーズの段階で、企業名や住所、部署課名、役職など複数の項目がある場合はフォーム入力時点での離脱が予想されるため、ダウンロードでのフォーム項目は、例えば、氏名、電話番号、メールアドレスなど、最低限必要な項目だけにします。
(会社名や部署名、課題などの詳細は、DL後のメールや電話などでの追客活動の中で聞くことができます)

別途、顧客事例DLいただいた方だけに、製品別・業種別の関連情報やお役立ちコンテンツ、他のe-bookのご紹介、セミナーのご案内などのメール送信することも考えます。

より、効果を出すためのご参考)
1.事例コンテンツ数とCVRの関係について(注)
1)事例コンテンツを追加することで得られるCVRの改善効果は、事例コンテンツ数30件までは大きく、事例コンテンツ数30件以降は小さくなる
2)事例コンテンツが12件を超えると一般に「事例ページ経由CVR」の方が、「事例ページ非経由CVR」に対して高くなる
2.各種UI/UXとCVRの関係について(注)
1)事例詳細ページに資料請求導線を設置することでCVRは高くなる
2)事例トップページにおいて、ファーストビューで目立つ導入実績のアピールはした方がCVRは高くなる
3)事例トップページにおいて業界・ニーズ別事例検索機能を設置することでCVRは高くなる
3.事例コンテンツ数30件以上のサイトにおけるUI/UXの最適化とCVR改善効果の関係について(注)
事例コンテンツ数30件以上のサイトにおいてUI/UX最適化のCVR改善への効果は大きい

(注)WACULの調査より
https://wacul.co.jp/lab/posts/examination-btob-site