企画目的と取材方法、制作上の留意点 顧客事例コンテンツ④【ネクストライク203号】

「顧客事例」コンテンツ④として、「顧客事例」企画目的の明確化から取材先の決定、打ち合わせ、取材など、実務的な制作工程別の内容と制作にあたっての留意点について考えてみました。

1.「顧客事例」の企画目的の明確化

商品力や提案力、アフターサポート力が不充分だと、お客さまの満足度も高まりませんので、「顧客事例」を依頼することが難しくなります。
営業の問題や限界はあるかもしれませんが、「顧客事例」コンテンツは最大の他社差別化ツールであるとの認識を持ち、社内の組織力の向上や次のニーズ開発という先行投資という意味合いでも、マーケティング本部と現場営業の両方が会社や事業部全体としての「顧客事例」の大切さを共有し、真剣に取り組むべきと考えます。

「顧客事例」の企画について最初に検討することは、活用目的を明確にすることです。どういった「顧客事例」をつくるべきか、どういった解決策や利用シーンにフォーカスを当てるべきかを検討することから考えます。

【主な目的の例】
1)新商品や強化商品の提案力強化
2)デジタル施策のためのコンテンツ強化
3)商品の評価や商品開発・企画のための市場調査
4)新しい市場への参入
5)企業イメージ(ブランディング)の向上

営業目的としては、ターゲットの共感を得ることが必須になりますので、できるだけ細分化された「顧客事例」が整理された状況が理想。たとえば、業種別、採用商品別、課題別、規模別、エリア別などにセグメントするなどの整理分類し、提案活動に生かすことが重要になります。

また、紙媒体からデジタル化の流れによって、「顧客事例」コンテンツは、WebやWeb広告、LPなどの施策やメルマガ、ブログ記事、PDF、ホワイトペーパー、動画などのコンテンツに、2次利用、3次利用と活用の幅が広がっており、デジタル展開を強化する重要なツールとなっています。

2.事例の中から取材候補先をピックアップする

企画目的が決まったら、実際にインタビューを行う企業を選定します。「顧客事例」の質は企業選定によって決まるので重要です。

企業選定は、大きく、顧客事例によって狙いたいターゲットはどこか、それは、どんな業種・業界、属性なのか、自社の強みが表現できるかなどで決めます。

事例候補先を探すとき、営業担当からの既納入先の紹介が一番多いのですが、その時、重要になるポイントは、あらかじめ、受注前から準備をしておくことです。営業担当者が受注前の時点で「事例取材にご協力をいただけるか」を顧客に確認するルールを作っておきましょう。

ほかに、企業や本部事業部内で会員組織化できている販売店があれば、メーカーのHP(ホームページ)で公開している会員店のほとんどは自店の会員HPでも「お客様採用事例」を公開していますので、そこから、本部事業部としての好ましい「採用事例」を掲載している該当店にリサーチ・交渉し、事例として取材することも検討します。
また、組織本部としての定期的な施策として、例えば、区切りのいい事例達成数ごとに事例候補先を探し、掲載依頼もしやすい環境を作ることもできます。

(弊社では、1万件の顧客事例の中からニーズや商品アイテムごとに整理し、それを企画取材して営業提案ツールを作成したこともあります)

さらに、作品コンテストを実施している中から取材許諾をいただくことや販売コンテストを実施しているなら、販売(採用)事例の提出を評価に加え取材を行う、そのほか、手間と費用が掛かりますが、新商品発売時のモニターキャンペーン募集などから集めた顧客の中から、インタビューにご協力いただける方を開発することも考えます。

仮に、「まだ顧客事例がほとんどない」「事例展開の施策を始めたばかり」という顧客事例が少ない企業さまの場合でも、たとえ数が少なくても、採用企業の中で活用度・満足度が高い企業があれば、顧客事例の展開を始めることをお勧めいたします。

そして、将来的には、信頼の獲得を主目的とする場合は上場企業・ターゲットとなる業界で有名な企業など、成功イメージの想起を主目的とする場合はターゲットに近い業界/業種/規模感(社員数)/課題感を持つ企業や導入企業の中で成果を出している企業などに絞って、それぞれ選ぶことで成果を出します。

他社に先んじて導入を進めた顧客が「導入事例」に登場することで、自社商品のイメージ向上にもつながるため、その業界内の先駆的ポジションを改めて印象付けられるような内容になれば理想です。
事例の数が増えてきたら、徐々に、新規で狙いたい業種や業界、規模など、事例の目的を明確にした企業選定をしていきます。

一方、この「顧客事例」の取材は、導入済みのお客様に改めて取材のアプローチし、「売りっぱなし」状態を回避し、顧客満足度を再確認するアフターフォローの機会にもなります。
また、導入事例は「鮮度」も重要で、内容が古くなりすぎないように一定期間を置いて再取材し、アップデートしていくことも有効です。

よく営業提案したいが、それに使える事例がないとのお話があります。それは、その企業の組織力の問題であると考えます。売上を上げるためには、例えば、マーケティング分であり、事業部であり、営業部であり、当該組織の責任者は事例を集めなければなりませんし、その役割があります。

また、事例を集める苦肉の策として、社内や関係会社に事例をお願いすることもあるようですが、これは、事例を集めることが目的となってしまっている点で問題です。営業や提案力に何か問題があって、お客さまの承諾が事例協力を得られない点もあるかもしれませんが、しっかりとした提案とサポートさえすれば、事例の承認をいただくことはできるのではないでしょうか。

最後に、営業マンに徹底できない原因のひとつに「どういった事例を集めればいいか」、営業マン自身が分からないケースもあるかもしれません。「顧客事例お願いシート」とともに、優先する業種や課題・解決例やヒント、記事化サンプルなど、より具体的に営業に伝えることが必要です。

3.事前の社内打ち合わせ

製品・サービス導入のビフォー&アフターに取材対象企業を選定したら、次に、顧客事例依頼の趣旨説明や目的、既存の顧客事例のサンプルでアウトプットイメージを提示しながら、インタビュー骨子(抱えている課題、導入検討の経緯、選定ポイント、利用用途、効果、自社への評価、期待すること)、取材方法(日時や場所、取材対象、公開メディア、掲載の実績、必要な撮影許可、事例内写真の許諾など)などを顧客担当営業者と事前に、質問内容を共有します。

また、顧客事例制作の目的とともに「なぜ(他でもなく)当該企業にインタビューがしたいのか」という点を伝えることも重要です。顧客担当者への説明後に、本取材を行います。

4.取材(ヒヤリング)シートの提示

取材対象企業の属性(業種や規模、事業概要、取扱商品、地域、課題など)や取材担当者の属性(部門の役割や業務内容、ゴールなど)を把握したうえで、ヒヤリングシートを作成します。
取材対象や内容によって異なりますが、一般的に、取材(ヒヤリング)項目は以下になります。
1.導入検討の背景
1)導入した背景
2)抱えていた課題(複数)とその悪影響
3)課題となった時期
2.課題解決のための社内検討の経緯
1)課題解決のための情報収集の内容
2)特に、参考になった情報は?
3.採用の経緯
1)商品を知ったきかっけ
2)課題解決するための要件とは?
3)ほかに比較検討した商品は?
4)選定のポイントと採用になった決め手
4.採用後の効果や結果
1)現在の活用の程度や内容
2)採用後の効果(具体的な状況や数値、想定以外の波及など)
3)社内の声、評価
4)具体的なエピソードを紹介する
5.同様な課題を持つ企業担当者の方へのメッセージ
6.今後の展開予定、もしくは、少ない場合は、活用イメージや使用シーン、提案モデルなどでも考えます。

5.取材担当者の決定

取材は、ヒヤリングと記事作成の経験のある専門の取材ライターが担当します。業界や商品の知見があることが前提で選定します。

6.取材・撮影

ヒヤリングシート(取材)項目に沿って質問します。
顧客の「生の声」は貴重です。淡々とした事実のみではなく、顧客が商品・サービスを使ったことで得られた「気づき」「感動」「学び」「感謝」なども記事に盛り込むことで、共感しやすく、読みやすい記事になります。時に、ネガティブな情報も伝えることも考えます。
取材現場での撮影(右前、正面、左前、真横など)の他に、顧客の都合を優先したうえで、現場に出向いて実際の商品利用シーンを取材撮影することも検討します。(企業ロゴ、必要な写真の提供、撮影も依頼します)

7.事例制作にあたっての留意点

1)構成レイアウトの例(A4,4pの場合)

表1・・・・タイトルとキャッチ、顧客属性(業種業界、規模、担当部署、体制など)、採用商品と導入効果のポイント
表2・3・・課題と解決方法(B/A)、選定のポイント、担当者インタビュー
表4・・・・具体的な活用内容

参考)構成の例
1.企業の属性(業種や規模、地域、課題など)
2.抱えていた課題
3.課題となった背景
4.課題解決のための社内検討の経緯
5.採用に関与した部署や担当者に意見や評価の声
6.選定ポイントと採用になった決め手
7.採用後の効果や結果
8.今後の活用展開予定(発展イメージや使用想定場面、運用方法などでも考えます)

2)タイトル作成について

タイトルには、具体的な数字を盛り込み、見出しで要約をしてわかりやすさを加えます。
・検討初期の層を狙うなら、導入の理由、課題や解決の経緯部分を強調する
・検討後期の層を狙うなら、成功イメージを訴求するため、成果の部分を強調する

3)導入事例の写真画像(メインカット)は、以下の3つのパターンがあります。

導入事例は興味関心を与える必要があります。特に、1ページ目では活用シーンの写真やお客様の業種がひと目でわかる、できるだけ映える写真を使います。

(写真画像について)
〇お客様の事業内容を象徴する画像
事業を象徴する画像は、お客様が会社案内や採用情報、広告宣伝で利用されている画像をお借りすることで了解を得やすくなります。そのほか、PIXTAなどのストックフォトを利用することもあります。
〇製品やサービスの特性やお客様の事業の特性から、活用シーンや事業を象徴する画像
〇集合写真画像

導入事例の多くが、会社ロゴの前や受付の前で並んでいる画一的な構図の写真が多いと思います。そこで、集合写真を撮る場合でも、お客様が談笑している写真を少し遠目から撮影する。または、楽しさを演出するために、上から撮影するといったパターンを活用することで集合写真にメリハリをつけます。

4)取材コンテンツのマルチ活用

「顧客事例」は、企業のコーポレートサイトのほか、商品サイト、導入事例ページ、集客サイト(オウンドメディア)、販売支援サイト、ホワイトペーパー、動画、ウェビナー、タイアップ広告でのインタビューコンテンツの配信などのデジタルコンテンツの他、広告や導入事例カタログ・パンフレット(PDFや紙)やさまざまな販促ツール、営業活動資料などのセールスプロモーションなど、マルチに展開することを検討します。

「顧客事例」は企業や商品の強みや他社差別化要素を凝縮し、現実的な説得力を持ち、顧客ニーズ(ファネル)のどの段階のターゲット、役職にかかわらず誰にも刺さるキラーコンテンツです。最大限、有効に活用しましょう。

5)顧客事例を増やす「非接触」型取材方式

「顧客事例」は重要と思うものの、手間と費用を考えるとなかなか進まないのが実際ではないでしょうか。

そこで、「非接触」型取材方式。
わざわざ、アポイントして訪問するのではなく、あらかじめ、インタビュー項目をお送りし、その後ZOOMや電話、メールのやり取りで取材原稿を完成させます。

取材先との事前調整(本社やエリア担当との打ち合わせの段取りや日程調整)のほか、スタッフの交通費や宿泊費等に関わる費用の社内申請など、今まで当然のように手間をかけていたことも不要になります。何より、取材にまつわる手間をかけることの煩わしさや時間の拘束から解放できることにより、その空いた時間をより有意義な仕事に投資できます。
もし、「お客さま事例」を定期的に継続して増やすとしたなら、これは大きなメリットと言えるのではないでしょうか?
具体的な段取りや費用などは、案件ごとの内容によってご相談できます。

従来の「訪問」取材型の割合は少なくなり、ZOOMやメール、電話で、取材の依頼からヒヤリングまでを行う非接触型の「お客さま事例」の増やし方のご相談をお受けしております。「顧客事例」の企画の始め方、作り方、増やし方、コンテンツ活用の仕方・幅広い展開などで、もし、ご興味ありましたらご相談を受け付けております。