「顧客事例」は事業拡大の武器となる。顧客事例コンテンツ②【ネクストライク201号】
ドラッカーが言うマーケティングの原点「顧客事例」は事業拡大の武器となる。
1.ドラッカーが考える、マーケティングが目指すもの
ドラッカーは言います。
「マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、自ずから売れるようにすることである」と。
自社の製品・サービスを購買されるお客様は、どんな人(会社)なのか、そこにどんなニーズがあるのか、どのようなきっかけや背景で導入を検討し始め、どんな情報を収集し、だれが、どのように比較検討を行い購買の意思決定をしているのか?
逆に言えば、なぜ、製品・サービスを購買されるのか、その際に、どんな情報を提供したら、”製品・サービスが自ずと売れるように”お客様に購買していただけるのか?
こういたことを考えずしてマーケティングは成り立ち得ません。
市場投入後から現在に至るまでの常日頃、事前のマーケティング企画で想定していたターゲットや課題、解決するための商品機能、セールスポイントなどを実際の市場での検証を行うことで、改めて顧客理解を深めることが可能になります。
複雑で変化する顧客ニーズの理解を通じて自社製品とサービスを顧客に合わせ、自ずから売れるように軌道修正する努力が企業の業績を左右するといえます。
2.顧客理解こそが、マーケティングの原点
ドラッガーは、マーケティング分析は企業の内部からではなく、企業の外側つまり、お客さま・販売側から
商品や技術の満足度を分析すべきと言っています。
マーケティング分析の重要なポイントは次の3つだそうです
①お客さまは誰か?
②お客さまはどこで買うか?(注:BtoBの場合は「接点メディア」と考えられます)
③お客さまは何に価値を求めているのか?
みなさまは こんなことはいつも考えているかと思いますしそれが仕事の原点でもあるかと思います。でも、実際忙しい中で、果たして考えられていますでしょうか?また、しっかり社内外にも共有されていますでしょうか?
ドラッカーはこんな”思い込み”がないですか?と7つの質問をしています。
質問1 お客さま・販売側について企業が知っていると考えていることは間違っていることの方が多い
質問2 企業が売っていると考えているものをお客さまが買っていることは稀である
質問3 重要な商品の特色と考えていたのに、時に、お客さまにとってまったく意味のないことがある
質問4 お客さまは合理的だ。不合理と考えるのは危険である
質問5 お客さまは誰かわからないという前提に立つ、お客さまとは支払者ではなく購入決定者のこと
質問6 直接の競争相手とみなしている商品・サービスが本当の競争相手であることは稀である
質問7 お客さま・販売側にとっては商品・企業も重要でない。商品、満足の一部でしかない
実は、上記の質問2の「企業が売っていると考えているものをお客さまが買っていることは稀である」と質問3の「商品のもっとも重要な特色・質と考えられているものが、時として、お客さまにとってまったく意味のないことがある」の2点は、価値観ギャップ、企業と市場(お客さま)の価値観の違いであり、新しいビジネスモデルの切り口やイノベーションの機会となります。
市場(お客さま・販売)側の視点で現状のマーケティング施策を真剣に考え取り組む必要性があり、その点では、もっと「顧客事例」を追求すべきと考えます。
特に、デジタルマーケティングの手法といったことに振り回されてしまい、本質的な顧客理解がおろそかになってしまい、「BtoBマーケティングに取り組んでいるが、なかなか思ったように成果がでない」という企業も多いのではないでしょうか。
企業のホームページや商品サイトなどのWebサイトやWeb広告などの施策、メルマガ・MAなどのツール、ブログ記事、ホワイトペーパー、動画、ウェビナーなどのコンテンツの企画作成などといった個々の施策やツールに着手する前に、いま一度、顧客理解がどの位できているか否かを事業部内で検証し、そのうえで、マーケティング施策・ツールやコンテンツの見直しを行い、同時に、「顧客事例」コンテンツの活用によって事業拡大を図ることをお勧めいたします。
3.顧客事例が解決する、部門間コミュニケーション対立の解消
「顧客事例」が、いわゆる、営業部門とマーケティング部門の対立という課題解消に有効かもしれません。
メルマガやMA(マーケティングオートメーション)、電話やウェビナーなどを活用したインサイドセールスによって、マーケティング部がリスト化した見込み客を営業に提供しても、後回しにされ、営業アプローチした結果も教えてもらえず、効果測定ができていない、効果が見えない、成果が出ていないなどの問題点を抱えている企業やご担当者さまが多いのではないでしょうか。
営業の視点では、いかに、ノルマの達成に向けた効率的な営業活動ができるだろうか、どのように提案したら効率的に受注できるだろうか、という近視眼的なってしまい、マーケティング部から提供された見込客へのフォローを依頼されても、営業にとってはそのお客様の導入検討の状況や確度が不明確だと、効率的な受注につながるか不安になったり、ノルマを達成できない懸念があるため、どうしても営業活動が後回しになってしまいます。
営業に後回しにされなく、協力してもらうために、営業部門とマーケティング部門が一緒になり、顧客理解のための、組織横断で取り組める方法が必要です。
その一つの方法として考えられ、取り組みやすい対策としては、「顧客事例」コンテンツをつくることです。
「顧客事例」制作のためのインタビューにて、例えば、「そもそもお客様はどういった課題を持っているのか」「自社製品・サービス選定ポイントや購入の決め手はなんだったのか」といったことを取材するとマーケティング部門だけでなく営業部門にとっても、自分たちではわかっていなかった自社製品・サービスの購買者から見た新しい価値や「知らなかった」「意外な意見」、なかには問題点などをお客様が教えてくれることが数多くあります。
つまり、「顧客事例」の制作を通じて、営業部門とマーケティング部門は共通の顧客理解認識を得ることができ、「こういった情報発信が必要そうだ」「こういったセミナーを開催すべき」などの実際の市場に対する課題について、営業部門とマーケティング部門、それぞれがどういった連携をすべきかが見えてくるようになります。
その結果、受注に繋がるリード創出の企画立案ができるようになり、マーケティング部門の見込み客情報が営業部門からも喜ばれ、健全な組織連携を図っていくことが可能になると考えます。